松本人志監督「さや侍」観ました

「大日本人」「しんぼる」に続く、松っちゃん監督作品3作目「さや侍」を観てきました。

ある出来事をきっかけに戦うことを拒み刀を捨てた侍が、脱藩の罪で捕らえられ、殿様から「三十日の業」を科せられる。母を亡くし笑顔が失われた若君を1日1芸、30日で笑わせられれば無罪放免、失敗すれば即切腹という難業に挑む姿を描いた松っちゃんオリジナル作品。

今回は松っちゃんは監督に専念して、出演はない。けれどやはり「笑い」に対する松っちゃんワールドはちゃんとエッセンスが入っていたと感じました。ストーリーそのものは、途中で展開が分かっちゃう感じもしたけど、最後に出てくる竹原ピストルの歌に驚いた。彼のことは初めて知ったけれど、力があって、素直に良いと感じました。

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そして主役「野見勘十郎」を演じた野見さんは、素人のおっさん。松っちゃんは遠隔で指示を出し、本人にも映画の撮影だとは知らされないまま撮影が進められたそうです。それだけに30日の業を科せられ1日1業をやり遂げる姿は気迫も感じたし、「演じる」世界観から離れていたように感じて面白いと思いました。

笑い、涙、そして人生に対する美徳みたいなものが詰まっていて、映画らしい映画だと思います。最近の映画は何が何だか分からない、CGのオンパレードな映画ばかりでしたが、僕は大好きです、「さや侍」。

最後に松っちゃんと野見さんのインタビュー記事が掲載されたサイトを見つけたので、そちらから記事を転記させていただきます。なかなか読み応えのあるインタビュー記事です。

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映画.comより転記
http://eiga.com/movie/55932/interview/
http://eiga.com/movie/55932/interview/2/

松本人志が明かす「さや侍」キャスティングの真意

第64回ロカルノ国際映画祭(8月3日開幕)への出品が発表された、「ダウンタウン」の松本人志の監督映画第3弾「さや侍」が6月11日に公開される。長編監督デビュー作「大日本人」、松本ワールド全開の「しんぼる」に続いて選んだテーマは、時代劇。さらに、これまでの2作は自らが主演を務めてきたが、今回は俳優経験皆無の野見隆明を抜てきした。その真意がどこにあるのか、松本監督に迫った。(取材・文:編集部)


松本監督と野見は、2002年に放送されたバラエティ番組「働くおっさん人形」で出会い、それは“おっさん教育バラエティ”とうたわれた「働くおっさん劇場」へと続いていった。“おっさん”たちは別室で収録を行い、松本監督からの指令に従う型式だったため、撮影中にふたりが顔を合わせることはなかった。それでも、野見の特異なキャラクターが強いインパクトを残し、いつからか起用を考えるようになったという。

「野見さんでいつか何か撮りたいなという思いは、ぼやっとありました。ただ、主役とまでは考えていませんでした。幸か不幸か、僕が股関節を痛めてしまった。それが一因ではあります。そうでなかったら、僕がやっていたかもしれないですね。今思うのは、僕がやるよりも野見さんがやって正解だったなということです」


今回の撮影では、松本監督がメガホンをとることを野見に対して徹底的に隠し通した。「自分の格好で時代劇というのはわかったでしょうが、自分が何をやっているのかも、映画ということもわかっていない。台本も渡していないし、僕は遠隔操作に徹して助監督から指示するようにしていたので、誰が監督かなんて知るわけもない」。しかし撮影後半ともなると、もどかしさを抱くようになり「気が付いたら飛び出して野見さんを怒鳴りつけてしまっていました(笑)」と振り返る。

怒鳴られた野見の驚きは、想像するに難くない。松本監督にとっては、板尾創路や國村隼、伊武雅刀ら“プロ”の出演者への演出とは勝手が違ったはずだ。「野見さんはトカゲみたいなもんで、どっちへ走って行くかまったくわからないんですよ。みんな、後半になってようやく慣れてきましたけどね」と説明。そして、「前代未聞の映画ですよね。主役が完全に素人の映画はあったかもしれないですけれど、それを本人が認識していないというのはね」と笑った。

また、バンド「野狐禅」でボーカルを務めていた竹原ピストルの起用にうならされる。今作では本名の竹原和生名義で出演しているが、これまでに熊切和嘉監督作「青春☆金属バット」「海炭市叙景」に主演しており、独特の存在感を放つ知る人ぞ知る注目の俳優だ。松本監督は、司会を務める「HEY! HEY! HEY!」に竹原が出演してから注目するようになり、ラジオ番組「松本人志の放送室」で絶賛したこともある。


キャスティングに際し、「野見さんと竹原くん、そして芝居のちゃんとできる女の子。この3人は最初からイメージがあった。野見さんはやってもらえるだろうと思っていましたが、竹原くんが出てくれるか心配でした。興味がないと言われたら、この映画はどうなっていくんやろとヤキモキしましたが、快く引き受けてくれた」と強くこだわった経緯を説明する。竹原の役どころについて詳細は伏せるが、物語を構築していくなかでキーパーソンであることは誰の目にも明らか。そして、子役の熊田聖亜の起用は偶然の産物であったといえる。「当初は男の子の予定だったんですよ。ただね、主役があまりにも汚すぎるので(笑)、かわいい女の子にして助かりました」

初の時代劇演出を経て、時期尚早だと重々承知ながら次回作へと思いを馳せる。「全然違うものを考えないといけないなとは思います。毎回、オリジナリティのあるものを作り続けないと、僕が映画を撮る意味がないですから。とはいえ、今はゼロの段階ですね」。松本監督にとって、初心と言っても良いサービス精神こそが映画製作へと向かわせる原動力になっているそうで「お金にならないことで一生懸命やることがひとつくらいあっていいのかなと思いますね。今さらお金に対して執着もありませんし」と言葉を選びながら話す。

そして、公開を目前に控えた松本監督は、改めて感じていることがある。「追い込まれる男を演じるのは第三者のほうがいい。自分が演出して自分を追い込んだって、『結局、おまえがやってるやんけ』となりますから。僕が監督に徹するのは、正解やったと思います。野見さんが追い込まれていくさまがマジですもんね」。自らの作品を客観視することで完成させた「さや侍」から得たものは、計り知れない。次回作でも監督業に専念するのか、再び主演として銀幕に戻ってくるのか。来るべきときにどのような決断を自らに課すのか、今後も目の離せない“映画人”だ。

野見隆明、“まさか”の「さや侍」主演の次に狙うもの

松本人志に見初められたこのおっさん、ラッキーボーイと呼ぶにはとうが立ちすぎているし、シンデレラストーリーというにはイメージがかけ離れている。野見隆明、54歳。松本の監督第3作となる時代劇「さや侍」の主演に大抜擢された素人だ。しかも本人は、映画であることを一切知らされずに撮影に臨み、主役だと分かったのは完成した作品を見たときという、なんとも異色の銀幕でビューである。いったい、このおっさんにどんな魅力が潜んでいるのか? 探ってみた。(取材・文:鈴木元、写真:堀弥生)


約20分の対話の中で、「まさか」と「ビックリ」を使うこと実に7回ずつ。公開が間近に迫っても、いまだに実感が伴わない証拠だろう。「さや侍」はそれだけ、野見の理解が遠く及ばないところで製作が進められていった。

「なんか吉本でDVDを作るからちょっと一緒に来てくれと言われて、オーディションを受けたみたいな感じで、気がついたら始まっちゃった感じですね。何が始まるんだろうという」

そもそも野見は、日本テレビのトーク番組「松本紳助」を観覧していたときに、松本の目に留まり、2003年、フジテレビの人間観察ドキュメントといわれた早朝のバラエティ「働くおっさん人形」で“芸能界デビュー”。これは06年、同局のおっさん教育バラエティ「働くおっさん劇場」へと進化し、ときにムチャぶりもある松本のマイク越しの指示に、一生懸命応えようとする姿が笑いと強烈なインパクトを与えた。

そして、今回の大抜擢となる。だが、脚本を渡さないのはもちろん、スタッフ、キャストをはじめ関係者には、野見に映画の撮影であることを悟られないよう徹底したかん口令が敷かれた。撮影場所にも松本の姿はなく、1シーン1カットごとに助監督らスタッフが指示を出した。立ち会っていたスタッフが「主役は決まっていたんですけれど、そう言うと本人が勘違いするので」とフォローする。


「なんでこんなことをやっているんだろうとは思っていなかった。DVDを作るんだから、一生懸命やらなきゃいけないと思っていましたね。面白いことをしよう、笑わせようというのではなく、言われたから言われた通りにしなきゃって」

「さや侍」は、ある出来事をきっかけに戦うことを拒み刀を捨てた侍が、脱藩の罪で捕らえられ、殿様から「三十日の業」を科せられる。母を亡くし笑顔が失われた若君を1日1芸、30日で笑わせられれば無罪放免、失敗すれば即切腹という難業に挑む姿を描く。

セリフはほとんどないものの、人間大砲や人間花火、ロデオマシンなど大掛かりなセットでの撮影に体当たりで挑戦。松本が「与えられたことはどんなことでも一生懸命やる」という評価通りに、黙々とこなしていく。そして撮影が佳境を迎えたころ、それまで別場所でモニターを見ていた監督が姿を現し映画であることを告げる。

「もうビックリしました。ビックリしたのと同時に、まさかと…。エヘヘヘヘへ。ビックリしましたねえ。プレッシャー? というよりもひとつひとつの演技をやらなきゃというのが頭にあったから、とにかくやり遂げようということした考えていなかった。だから、終わったときは感動しました」


それでも主役ということは伏せられたままで、本人が知るのは数カ月後、完成した映画の試写会だった。

「まさか主役だとは思ってもみないし、試写会であっ、主役なのかと。本当にビックリしちゃって。まさかこんなにやっている(出演している)なんて、ビックリしたのはこっちの方。本当にビックリしたと、心から思いました」

すべての真相を知ったときの驚き、興奮が伝わってくるように言葉は上擦り、体は小刻みに震え、胸ポケットから垂れた携帯のストラップが揺れる。そんな野見のとまどいとは関係なく、ポスターや予告編制作など公開に向けた準備が進んでいく。それに従って周囲の注目度も高まったようで、先日、交番の警察官に声をかけられたという。

「『野見さんですよね』と聞かれたから、『そうです』って言ったら『映画見に行くよ』と言われました。素人のただのおっさんがこんなことをやらせてもらって、松本さんには本当にありがたいと思っています」


これからは「俳優」という肩書きがつくことに関しては「ピンとこない」と謙そんしながらも、どこか映画出演を狙っていた!? フシがある。

「自分の中ではいつかやってくれるかもしれないけれど、まだ早いんじゃないかと。『おっさん人形』『おっさん劇場』ときて、まさかここで映画がくるのかと思ったから」

公開が近づくにつれて取材を受けることも増え、5月7日には完成披露試写会で生まれて初めて舞台挨拶に立ったが、前日は緊張で眠れなかったという。不安になるのも無理はない。それでも、「お客さんがいっぱい入ってくれれば、一番うれしいなと思います」と精いっぱいのPRに努めた。

これまで松本と面と向かって話したことはほとんどないそうで、映画の撮影後も声をかけられていないという。しかし、調理師、絵画の販売と管理、バーテンダーなどさまざまな職を転々としてきた「ただの素人のおっさん」をここまで導いてくれたのは紛れもなく松本のおかげである。最後に「まだまだ松本さんに恩返ししなければいけませんね」と向けてみた。

「松本さんが映画を作るんだったら、もう1回出してもらえればありがたい。主役じゃなくてもいいです」

やっぱり、どこかしたたかである。

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